リレー・セラピューティクス(Relay Therapeutics)について解説します!
① ソフトバンクが出資しており、2020年7月16日にナスダック上場予定
② 効率の良い創薬を目指すDynamoプラットフォーム
③ SHP2阻害薬(RLY-1971:低分子化合物)が現在一番有望な新薬候補
リレー・セラピューティクスはナスダック上場を予定している医薬品メーカー
みなさんはリレー・セラピューティクスという企業についてご存知でしょうか?同社は2020年7月16日にナスダックに上場を予定している医薬品メーカーになります。
米証券取引委員会(SEC)への届け出によると、1470万株を1株16~18ドルで売却する計画となっており、最大で2億6500万ドルを調達する可能性があります。
実は日本にも無関係ではありません。あのソフトバンク・ビジョン・ファンドが3億ドルを出資し、株式の41%を保有しているとのことですので、ソフトバンクGの株を保有している人にとっては気になる企業ですね。
そんなソフトバンクが目をつけたリレーとはどんな会社なのでしょうか?
最先端の計算と実験を組み合わせたプラットフォームが特色
リレーは2015年5月に設立された比較的新しい企業になります。同社の大きな特色として、「Dynamoプラットフォーム」というものがあります。

最近の科学技術は非常に進歩していて、コンピューター上で創薬ターゲットとなるタンパク質の構造を再現することができるようになっています。
また、人間の体ではこういったタンパク質(受容体という鍵穴のようなもの)に何らかの物質(リガンドと呼ばれる鍵)が結合することでいろんな反応(薬の効果や病気の症状)が引き起こされるとされているわけですが、コンピューター上でどんな物質が結合しやすいのかを計算できるようにもなってきています。
(ここの説明が難しくなって申し訳ありません、イメージしにくい方は花粉症のCMで出てくる鍵穴を防ぐみたいない感じなのでそちらを思い浮かべていただくとよいかと!)

「Dynamoプラットフォーム」ではこのような計算によるアプローチと細胞や動物を対象とした実験を組み合わせることにより、より新薬となる可能性の高い候補物質を効率よく発見することを目指しています。
Dynamoプラットフォームには機械学習やスーパーコンピューターの活用も行われているということですのでまさに最先端ですね!
ただ1つ注意したいのは、コンピュータ上での計算や実験を組み合わせた創薬はリレーだけが行っているのではなく、他の製薬会社も行っているもので、方法自体は一般的なものということです。「Dynamoプラットフォーム」が他社のものよりどの程度優れているかは評価が難しいですが、それは今後リレーの創る新薬が明らかにしてくれるでしょう!
低分子の創薬を目指しているのも特色
普段、医薬品の大きさなんてイメージをすることは少ないと思いますが、「低分子医薬品」と「バイオ医薬品」には上の図のように大きな違いが存在します。
現在の世界の主流は「バイオ医薬品」になります。これは特許が切れた後でも他社が同じものを作るのは難しいことや薬価が高くつきやすいことが理由となっています。
しかし、そのような状況下であってもリレーが低分子の医薬品を創ることを目指すというのは、時代に逆行しているように見えますが、以下のような特長があります。
低分子医薬品の特長
① 薬価が安くなる
② 経口剤にしやすい
③ バイオ医薬品と比べると保管が楽
こういった特長は患者さんの負担を減らすことにもつながるので、ペーシェント・セントリシティ(患者中心主義)の一環ということもできそうです。
それでは、実際にリレーはどんな新薬候補を持っているのでしょうか?
SHP2阻害薬(RLY-1971)という新規抗がん剤候補
リレーのパイプライン

リレーのパイプラインの一覧を見てみると、3つの新薬候補があることがわかりますが、全てがん領域をターゲットにしたものになります。がん領域はまだまだ薬が出そろっていない(つまりお金になる)こともあってどの製薬企業も創薬ターゲットにしていますね。
リレーは「SHP2」「FGFR2」「PI3Kα」というタンパク質をターゲットにした薬の開発を進めており、この中で実際に臨床試験に到達しているのは「SHP2」をターゲットにした「RLY-1971」ということですので、この薬が一番早く世に出る可能性が高いです。
RLY-1971(SHP2阻害薬)
「SHP2」というタンパク質を阻害する低分子化合物で、現在フェーズⅠ(初期)の臨床試験が行われています。この試験の結果は2021年に報告される予定となっています。
単剤での使用または従来の薬との併用が期待されており、従来の薬に耐性を持っているがんに対して有効である可能性が示唆されています。
米国では毎年約12万人のがん患者がSHP2阻害薬の恩恵を受けると試算されていて、「RLY-1971」が承認されれば十分使用される見込みがあると言えるでしょう。
(*もし初期段階での治療に用いられることになれば年間約29万人が使用することになるという試算もあります。)
製薬大手のノバルティスファーマも「TNO155」というSHP2阻害薬の臨床試験を開始しているため、いかに早く承認を得られるかが重要となってきそうです。
RLY-4008(FGFR2阻害薬)

「FGFR2」を阻害する低分子化合物で、承認された場合には米国で毎年約8,000人のがん患者が使用する可能性があります。また、2020年末に最初の臨床試験が開始される予定となっています。
RLY-PI3K1047(PI3Kα阻害薬)
PI3KαH1047X変異体の選択的阻害剤(正確に言うとこんな長くなります(笑))で、承認された場合には米国で毎年約48,000人のがん患者が使用する可能性があります。2021年に臨床試験を開始する予定です。
リレーの将来性は?
ソフトバンクの投資するリレーですが、一番臨床試験が進んでいるものでフェーズⅠということですので実際に利益を出すのは結構先になりそうですね。

当たり前ですが創薬ベンチャーなので赤字です!
医薬品の特許権を売ったり、承認を得るまでは基本的には収入はありませんから投資などで資金繰りをする必要がありますね。
とはいえ、最近の医薬品のベンチャーは大手の製薬会社に買収されることが多いのでその可能性もありますね。その場合は株価も上昇するのでソフトバンクもある程度は儲けられるという見込みなのかもしれません。
これまで解説してきた通り、リレーはわりと一般的な創薬ベンチャーです。失敗する可能性も非常に高いので投資先としてはかなりリスキーといえます。個人的なオススメとしてはこういうところはみんなが忘れて価格がすごく下がったときに購入するのが吉ですね。IPOの直後は期待が膨らみすぎて過大評価されがちです。
ここまでお読みいただきありがとうございました!すこし専門的な内容も多くなってしまいましたが、少しでも参考になったらうれしいです!質問等あればわかる範囲で回答しますのでコメントでもTwitterでも連絡ください!毎度のことですが投資は自己責任でお願いします(笑)
コメント